
9月25日開催、翻訳ミステリー福島 〈エラリイと参加者のライツヴィル・サーガ〉読書会 参考資料
フランシス・M・ネヴィンズJr「エラリイ・クイーンの世界」秋津知子ほか訳 (1980年早川書房刊)より、エラリー・クイーン全長編レビュー

【第一期】
1929年 ローマ帽子の秘密 The Roman Hat Mystery
著者兼探偵エラリイ・クイーンのデビュー作は、およそ45年前と同じように今日でも読まれる作品としての、いつでも通用する技法で書かれた、典型的な優れた本である
著者兼探偵エラリイ・クイーンのデビュー作は、およそ45年前と同じように今日でも読まれる作品としての、いつでも通用する技法で書かれた、典型的な優れた本である
1930年 フランス白粉の秘密 The French Powder Mystery
「ローマ帽子」よりも技巧的にもっと光っている
1931年 オランダ靴の秘密 The Dutch Shoe Mystery
ふたたび設定に人間と同じように生き生きとした性格を持たせている
1932年 Xの悲劇 The Tragedy of X
まさに探偵小説の黄金時代の最高傑作に格付けされるものであり、読者にとっては複雑に驚かされ、巧妙に頭をなぐられたような気分にさせられる、そして眩惑を感じそうなフェアプレイを味わう本である
1932年 Yの悲劇 The Tragedy of Y
構成と技巧の見事さと、真面目な意図と推理を要する謎との組み合わせという点で「X」に遜色ない眩暈を感じさせる。//
「X」と同様にこれまでの探偵小説の中では最高の傑作であり(略)犯罪史上まったく比類するもののない悲劇のもたらす絶望の深さを感じさせるのである
1932年 ギリシア棺の秘密 The Greek Coffin Mystery
黄金時代に合衆国で出版された探偵小説の中では、おそらくいちばん複雑で頭の痛くなるような奇跡的としかいいようのない見事な構成による作品
1932年 エジプト十字架の秘密 The Egyptian Cross Mystery
技術的に見れば、この作品は完璧とはいえない。// しかし、比類なく大きくてしかもうまく取り扱った枠組みと、ぎっしり組み込まれたプロット、それに、社会的にも経済的にも、そして地理的にも本質的に異なるいくつかの舞台の生き生きとした描写からすれば、第一期の作品の中では上の部に入れられるべきであろう
1933年 Zの悲劇 The Tragedy of Z
クイーンの最高傑作ではないし、秀作と比べるとはるかに驚かされることが少なく内容が貧弱である。// プロットは安易に流れているし欠点が多い。// とびぬけて優れた作品の中にははいらないとしても、一度ならず読み返しても損はない興味を引く本である
1933年 レーン最後の事件(最後の悲劇) Drury Lane's Last Case
優れたアイデアもあるが、それを損なっているのが軽率さであり、乱雑さ、同時発生的出来事、作為、信じがたい動機付け、それにプロットに驚くほど多くの脱落がある。初期の作品のなかで、この1作だけは書かなければよかった思う人すら出てきそうな内容である
1933年 アメリカ銃の秘密 The American Gun Mystery
ほかのどの作品にもおとらず、今日読んでおもしろいと、読み返しのきく作品である
1933年 シャム双生児の秘密 The Siamese Twin Mystery
1933年の傑作の中でも群を抜いているだけでなく、第一期の作品としても傑作に数えられるもののひとつである
1934年 チャイナ橙の秘密The Chinese Orange Mystery
中国の晩餐のようなもので、食べているときには異国情趣があるが、食事が終わったとたんに空しくて満足感がない // 第一期の作品のなかでは、いちばん愚劣な作品に数えられねばならない
1935年 スペイン岬の秘密 The Spanish Cape Mystery
エラリイの推理は論理的に情け容赦なく良心的でフェアであるが、、クイーン自身は本格的な推理で謎解きをする可能性を早急に使い尽くしつつあるという実感を持っているのが感じられる
【第二期】
1936年 中途の家 Halfway House
明らかに構成をゆるめ 、単純かし、人間的興味をふんだんにもりこみ、「ギリシャ」や「X」などの過酷なまでに頭脳を痛めつける網の目のように入り組んだ構成をもてあました読者を満足させようとしたのだろう
1937年 ニッポン樫鳥の謎 (隔てのドア)The Door Between
初期のものとあまりにかけ離れているので、同一作家の手になるとは思えないくらいである。推理は直感に運転席をゆずり、人物描写と相互関係が重視され// はじめて、どのページにも恋愛の要素が見られる // 第二期中、もっとも優れた作品になっている
1938年 悪魔の報復 The Devil to Pay
クイーンの試みの中でも成功にはほど遠い
1938年 ハートの4 The Four of Hearts
いくつかの巧みに組み込まれた手がかりと際立ってうまく隠された犯人、そして法律知識がハリネズミの針のようにすきまなく立っているすばらしい構想を誇っている
1939年 ドラゴンの歯The Dragon's Teeth
論理の演習問題としてみると虫歯だらけである // あまり重要ではない小品とはいえ、軽い娯楽読み物としてはなかなかいいのである
【第三期】
1942年 災厄の町 Calamity Town
この第三期の作品群では、本格的な推論の問題がふくらみのある人物描写、秀逸な文章、それまで長い間、犯罪小説には不可能、かつ不適切と信じられていた深みのある知的で想像力あふれる形式に溶けこんでいる
1943年 靴に棲む老婆(生者と死者と)There Was an Old Woman
クイーンが1930年代書いたどの作品ともあきらかに違ったものであるといってよく、「災厄の町」よりさらに革新的である。// クイーン流のブラックユーモアの最初の成功例となった
1945年 フォックス家の殺人The Murderer Is a Fox
クイーンの作品中、真実追求の興奮をこれほどよく伝える作品はほかにない
1948年 十日間の不思議 Ten Days' Wonder
恐らくそれまでのクイーン作品中いちばんの異色作といってよかろう //
クイーンがやってみせるまで探偵小説とはとうてい両立しないと思われた次元の広がりを併せ持った素晴らしい作品である
1949年 九尾の猫 Cat of Many Tails
クイーンが書いたもっとも内容豊かな小説であり、「災厄の町」とともに彼の作品の最高峰をなすものである。これは絶えず満足を覚えながら何度でも読み返すことのできる作品であり、ミステリの枠内で何が達成できるかの永遠の証でもある
1950年 ダブル・ダブル Double, Double
クイーン的である点では前2作とほとんど遜色がないが、緊迫感は及ばない
1951年 悪の起源 The Origin of Evil
彼の50年代の作品中でも最高傑作のひとつである
1952年 帝王死す The King is Dead
サスペンス、ミスディレクション、中心的なてがかり、その他この小説の多くの要素はみな一級品である
1953年 緋文字 The Scarlet Letters
小説的な面と推理的な面を正面衝突させ、両方を玉砕させるという罠におち、またまた魅力的な失敗作を生むという結果に終わっている
1954年ガラスの村
これは50年代の恐怖政治を題材にすこしも真実味を失うことなく、プロット、人物、雰囲気の描出、批判、それぞれが豊かな素晴らしい小説なのだ
1956年 クイーン警視自身の事件 Inspector Queen's Own Case
単に人物がい生き生きと描かれている点で優れているばかりでなく、ミステリとしても秀逸である。50年代のクイーンのもっとも優れた小説のひとつに挙げられよう
1958年 最後の一撃 The Finishing Stroke
すべてが様式化され、昔なつかしく郷愁をそそり、悲しみをたたえている
【第四期】
1963年 盤面の敵 The Player on the OtherSide
「最後の一撃」の後、クイーンは5年間ほとんどなにも発表しなかった。 // 1963 年、ついに復帰し、彼が発表した小説は待った甲斐のあるものだった
「最後の一撃」の後、クイーンは5年間ほとんどなにも発表しなかった。 // 1963 年、ついに復帰し、彼が発表した小説は待った甲斐のあるものだった
1964年 第八の日 And on the Eighth Day
この小説は知的な興奮をもたらすたぐいの探偵小説ではないが、探偵小説をはるかに越えたものであることが驚嘆に値するのである
1965年 三角形の第四辺 The Fourth Side of the Triangle
新しい試みに対するクイーンの情熱が、60代に入っていまだに衰えていないことを如実にみせてくれる
1966年 恐怖の研究 A Study in Terror (同題映画のノヴェライズ)
ノヴェライゼーション稼業のあらゆる約束事を破り、映画から小説化した作品としてはそれ自体、読みごたえがあり、話題にする価値のあるごくわずかの、いや、唯一のものにあつらえなおしたのだ
1967年 顔 Face to Face
クイーンが60年代におこなったフェアな読者だましの中でも、とびきりの手が出てクライマックスに達する
1968年 真鍮の家 The House of Brass
クイーンのいちばん最近の、不満足な実験的作品というよりほかない
1969年孤独の島
多くの読者にとってははたして本当にこれがクイーンの書いたものかどうか信じがたい
1970年 最後の女 The Last Woman in His Life
クイーンの傑作とはいいがたいが、幸いなことに41年経ってもまだ彼の筆力は、彼自身の理解力をうわまわる影響力を持っていた
1971年 心地よく秘密めいた場所 A Fine and Private Place
「盤面の敵」と「顔」に並び、過去15年のもっとも優れた探偵小説といわなければならない。そして、クイーン以外の何人ともこのような小説を考えだせはしなかったはずだ。
