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越前敏弥、国弘喜美代訳角川文庫版『スペイン岬の秘密』229p
「ご存じかしら、クイーンさん」ローザが小声で言った。「眼鏡をとると、あなたはなかなかの美男子よ」
「え?ああ、そうなんです。だから眼鏡をかけているんですよ。下心のある女性を遠ざけるためにね」


それ以前の国名シリーズのエラリーならこんなことは言わなかったように思うのですが、後のハリウッドものの「ご乱交(?)」や『災厄の町』で女性にキスしたあと「おいしい口紅だ」とか言い出す萌芽は『スペイン岬の秘密』にあったのかもしれません。

角川文庫版81pの〈原注〉で言及されている「エラリーを手づまりにさせた数少ない問題のひとつであり、いまなお解決していない」という「負傷したチロル人の事件」が気になりますね。作品化されていたら『スイス鳩時計の秘密』というタイトルだったのかも。